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外傷学会専門医研修カリキュラム

 

Ⅰ.外傷学会専門医研修カリキュラム

1.一般目標

国民の期待にこたえられるように、質の高い、全人的な外傷診療を横断的に実践できる専門医を養成するため、以下の項目を到達目標として、段階的に進む研修を実施する。本専門医の研修期間は卒後初期臨床研修終了時から研修が開始される。研修開始から5年以上の経験を要する。
具体的には以下の項目を達成することを一般目標とする。

  1. ① 自らの専門領域の診断・治療に精通していること
  2. ② 外傷患者の系統的な初期診療を的確に行えること
  3. ③ 外傷患者の救命に関わる診断法、治療の適応や優先順位の決定を的確に行えること
  4. ④ 重症外傷患者の全身管理が的確に行えること
  5. ⑤ 事故・災害現場等にて、医療活動を実践できる能力を有すること

2.到達目標

到達目標1:基礎的知識と臨床応用
(1)局所解剖
・外傷診療上で必要な局所解剖について述べることができる。
(2)病態生理
・外傷診療に必要な病態生理を理解できる。
・侵襲の大きさと治療のリスクを判断することができる。
(3)輸液・輸血
・外傷患者に対する輸液・輸血について述べることができる。
・外傷患者の体液動態を理解し、適切な輸液をすることができる。
・血液製剤について正しい知識があり、外傷患者に適切な輸血をすることができる。
(4)血液凝固と線溶現象
・外傷患者における出血傾向を鑑別できる。
・血栓・塞栓症の予防、診断および治療の方法について述べることができる。
(5)栄養・代謝学
・病態や疾患に応じた必要熱量を計算し、適切な経腸、経静脈栄養剤の投与、管理について述べることができる。
・外傷、手術などの侵襲に対する生体反応と代謝の変化を理解できる。
(6)感染症
・外傷および損傷臓器特有の感染・予防について述べることができる。
・薬物動態の知識を有し、適切な抗菌薬の選択ができる。
・抗菌薬による合併症・副作用を理解できる。
・発熱の鑑別診断ができる。
・破傷風トキソイドと破傷風免疫ヒトグロブリンの適応を述べることができる。
(7)免疫学
・アナフィラキシーショックを理解できる。
(8)創傷治癒
・創傷治癒の基本を述べることができる。
(9)初期診療
・外傷初期診療手順について述べることができる。
・外傷の蘇生について述べることができる。
・外傷に起因するショックについて述べることができる。
(10)集中治療
・外傷患者特有の集中治療について述べることができる。
・病態別の検査・治療計画を立てることができる。
・外傷患者の呼吸・循環管理について述べることができる。
・鎮静・鎮痛について述べることができる。
(11)災害医療
・各種災害における特有の外傷病態について述べることができる。
・災害現場での外傷トリアージの考え方と方法について述べることができる。
・災害現場での応急処置について述べることができる。
・緊急度・重症度に応じた適切な搬送病院の選定ができる。
・災害現場での他職種との連携を行うことができる。
・災害時における情報の収集・伝達の方法について理解できる。
到達目標2:診療技術
(1)外傷診療チームのリーダーの役割を果たすことができる。
(2)外傷初期診療手順(生理学的検索・解剖学的検索)を的確に行うことができる。
(3)外傷診療に必要な検査・処置・麻酔手技に習熟している。
・あらゆる外傷の初期治療が行える。
・多発外傷に対する根本治療の選択と優先度を判断することができる。
・他領域の専門医要請、もしくは他施設への転送の必要性を判断することができる。
(4)以下の手技・処置を含む初期治療ができる。
  • 気道確保(気管挿管、輪状甲状靭帯穿刺・切開、気管切開)
  • 胸腔穿刺・ドレナージ
  • 静脈路確保(静脈切開、中心静脈穿刺、骨髄穿刺)
  • 創傷処置(外出血の止血、創縫合処置)
  • 心嚢穿刺・心膜開窓
  • 蘇生的開胸術(*)
  • 下行大動脈遮断(大動脈閉鎖バルン)
  • 緊急穿頭・開頭
  • 緊急開腹手術(damage control surgeryを含む)
  • 四肢鋼線牽引
  • 骨盤創外固定
  • 経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)
  • 成傷器遺残の鋭的外傷(刺創・杙創)の手術

    *.蘇生的開胸術:ER開胸を行なったもので、目的が次の5つのうちのいずれかのもの。
    1. 心タンポナーデ解除、2. 胸腔内大量出血の直接止血、3. 気道(気管支・肺)損傷による多量の空気漏出に対する肺門遮断、4. 下行大動脈遮断、5. 心マッサージ

(5)検査手技
・超音波検査(FASTを含む)を実施し、診断できる。
・エックス線単純撮影、CT、MRIの適応を決定し、読影することができる。
・造影検査 (血管、消化管、尿道等)の適応を決定し、読影することができる。
・内視鏡検査(気管支、消化管等)の必要性が理解できる。
・診断的腹腔穿刺・洗浄の必要性が理解できる。
(6)集中治療
・集中治療に必要なモニタリングとその解釈ができる。
・ベンチレーターによる呼吸管理ができる。
・ショックの診断と原因別治療ができる
・ARDS、DIC、SIRS、MODSなどの診断と治療ができる
・鎮静・鎮痛管理を行うことができる。
・初期輸液・輸血を含めた体液動態管理ができる。
・外傷特有の凝固異常に対処できる。
・血栓・塞栓症の診断・治療と予防ができる。
・中心静脈栄養・経腸栄養の管理ができる。
・抗菌薬の適正な使用ができる。
・切開、デブリードマン、およびドレナージができる。
・適切な麻酔の選択ができる。
・体温管理ができる。
到達目標3:臨床経験
(1)研修期間中に診療担当医として、ISS 16点以上の重度外傷を60症例以上経験していなければならない。
(2)これには多発外傷と以下の全ての部位の診療経験(各々AIS3点以上)が含まれていなければならない。
括弧内の数字は最低限必要な症例数を示す。
  1. ① AIS 4点以上が2部位以上含まれる多発外傷(10例)
  2. ② 頭頸部外傷(10例)
  3. ③ 顔面外傷(3例)
  4. ④ 胸部外傷(10例)
  5. ⑤ 腹部・骨盤内臓器損傷(10例)
  6. ⑥ 骨盤・四肢外傷(10例)
  7. ⑦ 脊椎・脊髄外傷(4例)
  8. ⑧ 泌尿・生殖器外傷(3例)
ここで、脊椎・脊髄と泌尿・生殖器(腎・尿管・膀胱等を含む)は別個に扱い、頚部・胸部・腹部・骨盤には含まない。60症例の中に来院時心肺停止が含まれても良いが、5例を超えてはいけない。
(3)必須手技:到達目標2-(4)に基づく以下の14項目の手技・処置のうち、8項目以上を術者として各々1例以上経験していなければならない。ただし、以下で「助手も可」とされている項目に関しては、助手5例をもって術者1例に代えることができる。
  1. ① 輪状甲状靭帯穿刺・切開または気管切開
  2. ② 胸腔穿刺またはドレナージ
  3. ③ 輸液・輸血のための静脈切開、骨髄穿刺または中心静脈確保
  4. ④ 外出血の止血を伴う創縫合処置(*④)
  5. ⑤ 心嚢穿刺または心膜開窓
  6. ⑥ 蘇生的開胸術(*⑥)
  7. ⑦ その他の胸部手術(*⑦)(助手も可
  8. ⑧ 大動脈遮断(*⑧)
  9. ⑨ 緊急開腹止血術(damage control surgery)(*⑨)
  10. ⑩ その他の開腹手術(*⑩)(助手も可
  11. ⑪ 穿頭または開頭手術(*⑪)(助手も可
  12. ⑫ 鋼線牽引または創外固定(*⑫)
  13. ⑬ 経カテーテル動脈塞栓術(TAE)
  14. ⑭ 成傷器遺残の鋭的外傷に対する手術(*⑭)(助手も可
  • *④:止血すべき出血を伴う開放創に対する止血・縫合処置
  • *⑥:蘇生的開胸術:ER開胸を行なったもので、目的が次の5つのうちのいずれかのもの。
    1. 心タンポナーデ解除
    2. 胸腔内大量出血の直接止血
    3. 気道(気管支・肺)損傷による多量の空気漏出に対する肺門遮断
    4. 下行大動脈遮断
    5. 心マッサージ
  • *⑦:*2以外の胸部手術で、緊急・準緊急・予定手術を含み、外傷に限らず各種開胸・開縦隔手術のほか、観血的肋骨固定、血管内ステント留置術なども含む。ただし、胸腔鏡下手術は含まない。また、非外傷手術の場合は、その手術が外傷診療に有用であることが必要で、その適不適については専門医委員会で判断する。(例えば試験開胸術や胸腺腫摘出術、開胸リンパ節生検などは認められない。)
  • *⑧:*2以外の目的で行った胸部または上腹部の大動脈遮断で、大動脈閉鎖バルンを用いたもの(IABO)も含む。
  • *⑨:ガーゼパッキングを主体とした開腹止血術で、二期的手術を意図するもの。後腹膜パッキングも含む。
  • *⑩:Damage control surgery以外の開腹手術で、緊急・準緊急・予定手術を含み、外傷に限らず各種開腹手術を含む。ただし、腹腔鏡下手術や血管内ステント留置術は含まない。また、非外傷手術の場合は、その手術が外傷診療に有用であることが必要で、その適不適については専門医委員会で判断する。
    (例えば試験開腹術や虫垂切除術、鼠径ヘルニア根治術などは認められない。)
  • *⑪:穿頭または開頭手術であれば全て含まれる。
  • *⑫:四肢・脊椎・骨盤のいずれに対するものでも良いが、手・足関節以遠の骨折に対するものは含まない。
  • *⑭:凶器となる異物(刃物、鈍器など)が刺さったまま残っている鋭的外傷(刺創、杙創)に対する手術で、手・足関節以遠は含まない。


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